【2015課題図書】ぼくとテスの秘密の七日間・あらすじと感想
オランダの観光地、テッセルに旅行に来た10歳の男の子と島に住む一つ年上の女の子の一週間の物語です。
あらすじ
10歳のサミュエルは家族とテッセル島に1週間の旅行にきています。ところが初日に12才の兄、ヨーレが穴に転落して骨折してしまいました。 島の病院で診察を受けている間、サミュエルは、看護師(イダ)の娘11才の女の子テスと出会います。テスはグッピーについて知っているか聞いてきたり、ダンスの相手をしろと言ったり、どうやらちょっと変わった女の子のようです。サミュエルはなんだかんだでテスのダンスにつきあのでした。
そして、サミュエルとテスは「島の誰も助けてくれない」と嘆くおじいさんのペット、死んでしまったカナリアのレムスを埋葬するお手伝いをする約束をします。レムスが好きだったものをおそなえし、音楽を流してお葬式を行う3人。サミュエルは、島へ来る3週間前、クラスメートの父親のお葬式を経験したばかりでした。サミュエルは死ぬということがどういうことなのか、実感します。
テスはママと二人で暮らしています。パパは、テスが生まれる前にママと別れました。ママがパパに知らせなかったので、パパは自分に娘がいることすら知りません。テスも18歳になるまでパパの名前を教えてもらえません。テスの家はバンガローを所有しており、レンタルもしています。そして次にやってくるお客さんは、なんとテスのパパなのでした・・。
いよいよテスのパパ、ファーベル・ヒューホがやってきました。彼女のエリーゼも一緒です。もちろんテスが自分の娘だなんて知りません。そしてテスは、ママには内緒でフューホを招待していました。ママの思い出帳でパパの名前や暮らしぶりを知ったテスは、実際に会ってみてから、自分が娘だと名乗り出るかどうかを決めようと考えていたのです。
ですが、テスはいままで母娘ふたりでうまくやってきたことや、いろいろなことが心の中で整理できず混乱します。一方、兄のヨーレに「博士」と揶揄されるほど深く考える性格のサミュエルは、死について、大事な誰かに死なれて残されるものの孤独に対しても悩みます。
そしてサミュエルは、一人ぼっちに慣れるよう、できるだけ長くひとりでいる練習をはじめます。これがサミュエルのだした答えだったのです。その話を聞いたヘンドリックおじいさんはこう答えます。
「孤独に慣れても、何の役にもたたん。ベス(サミュエルの同級生)のお父さんが亡くなったとき、父さんと会う時間を減らしておけばよかったとベラが考えたとでも、君は思うのか?」
フューホが何気なく言った「子どもがいなくてよかった!」という言葉に傷ついたテスは、自分が娘だとフューホさんに告げないまま、最終日がやってきました。サミュエルには、口止めをして。
ですが、サミュエルは考えます。”テスという娘の存在を知らせないということをテスとテスママは二人で決めてしまっているけど、フューホさんは、自分の血を分けた娘この世界で歩き回っていることすらしらないままなのは、不公平じゃない?”
そして”許してくれないだろうけれど、テスのためにこの事実を伝えたい”と決心したサミュエルは、フューホさんにテスの秘密を教えるのでした。
さいごはサミュエル一家とテス一家で、フューホの娘としてのテスの誕生を「子ネズミ」というお菓子でお祝いして、めでたし、めでたし。
感想
親子関係に悩むテスと、死を初めて実感したサミュエル、それぞれの成長がお話の軸になっています。
作中に出てくるお祝いのお菓子「子ネズミ」は、オランダではとてもポピュラーで、赤ちゃんが生まれると何度も食べる機会があるそうです。なんだかラスクのようです。
フューホパパの娘として新しく誕生したテスのこれからがHAPPYであることを願います。
そして、サミュエルは「相手の立場で考えることができる」気持ちの優しい子だと思いました。出発のフェリーが来て、フューホに秘密を伝える時ですら、"テスが自分でこの事実を伝えたら、もう引き返せない。けれど、第三者のサミュエルが伝えたのだから、フューホが嫌であれば、知らなかった事にしてもよい"という選択肢まで作ってしまうあたり、相手の気持ちを考えるサミュエル・・10歳なのに!いい子じゃないですか。
「家族とは何か」「大事な人との別れがいつかやってくる日まで」などののテーマについて考えて読むと面白いのではないでしょうかヽ(^o^)丿