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【2023年課題図書】『5番レーン』ウン・ソホル著 5番レーンは再出発の場所

『5番レーン』

  ウン・ソホル (著), ノ・インギョン (イラスト), すんみ (翻訳)

 あらすじ

 カン・ナルは13歳、小6女子、種目はフリーフォームで漢江町水泳部のエース。6歳の時にお姉さんの影響を受け水泳を始めました。0.1秒の記録のためにプールを100往復し、授業時間には迷わずオリンピックメダルが夢だと公言します。しかし、水泳をなぜするのか考えたことはありません。いつも当たり前のように水に飛び込んで優勝に向かってきました。でも、最近はライバルに負け続け、悩んでいました。

 ナルは自分が勝てない原因がライバルであるキム・チョヒの水着にあるのではないかと疑問を抱きます。コーチの解説でいったんは解決したはずの疑問。後日この疑問のせいで、ナルはある行動をしてしまいます。

 

 

 

 

 

 

 韓国の13歳(数え年)は、水泳を続けるために体育中学校に進学するかどうかを決めなければならない年齢(※)でもあり、体と心の壁にぶつかってしまう時期でもあり、また本格的に水泳を始める最後の機会でもあります。
 ナルをはじめとする水泳部の子たちは同じプールで泳いでいても、それぞれ違う気持ちを抱いています。彼らはどのような道を歩んでいくのでしょうか?

 

※韓国の学校における体育教育はエリート育成に重きを置いており、「体育中学校」が公立学校として設置されています。

 


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 「登場人物たち」

◆カン・ナル (主人公)
「ナル、わたしは勝ち負けだけが水泳が世界のすべてじゃないと思うんだ」
「でも、試合は勝つためにやるものじゃないですか。アタシ、勝ちたいんです」p51

◆キム・チョヒ (ナルのライバル)
「ナルにむかついたときに気づいたんだよね。お守りよりも強いものがあるって」
「それって何?」
「私だよ」p239

◆チョン・テヤン (ナルの学校に転校してきた男子)
「一度はでいいから、ちゃんとやってみたい。手遅れになる前に。
じゃないと後悔しそう。ずっと思い出しちゃいそう」

◆チ・スンナム (ナルの幼馴染の男子 水泳部部長 ナルと付き合っているとうわさされている)

「中学校に行っても水泳やるつもり?」
「オレは、五分五分かな…続けたい気持ちが半分、ここまでかなという気持ちが半分。」p108

◆カン・ボドゥル(ナルの二歳上の姉、体育中学)
「競泳は、もういいかなと思ったんだよね・・・あたしはやれることをやったから、もう心残りがないの。それに、飛び込みが思ったより楽しくてね」

「「羽がなくても、一瞬だけ空を飛ぶことが出来る・・・飛びながらこう思ってる。とびっきり美しく飛ぼうって」 P194


◆キム・サラン(水泳部員 ナルの友達 最近彼氏ができた)
「わかったでしょ?スタートは、キューピッドの矢のようなものなの。
直進あるのみ。全力でね」p122

◆パク・セチャン  (水泳部員)
水泳が好きな理由も、スタートからタッチまで前に進むだけだからという。p117

 

◆シン・ドンヒ 平泳ぎ (水泳部員)p15
「シン・ドンヒ、またサンダルはいてないの?」
「そうだよ」
 ドンヒはいつも裸足で歩き回っている。・・・もしかしたらドンヒは、裸足で歩きたくて水泳を始めたのかもしれない。