読書の友は珈琲とチョコレート

本屋さんか図書館まわりで生きています。文学館にいることもあります。

【2016課題図書】『茶畑のジャヤ』 中川なをみ/著

 

あらすじ

 

 

 周はクラスで一番勉強ができる男子。勉強ができることをやっかみ、からかうクラスの中心にいる健一郎にいじめられる。健一郎にさからえず、周をハブにする仲間に入った周の友だち洋介。周を気にして声をかけてくれる幼馴染の加奈。

 

 周はいじめられているところを見られるはずかしさや、自分の置かれた状況のみじめさから、加奈に冷たくしてしまって孤立してしまう。そして学校を休んで、おじいちゃんが仕事をしているスリランカへ行くことになる。

 

 

スリランカは目に映るものすべてが新鮮だった。日本の茶畑とはすこし違った感じのお茶畑で、彼は茶摘みを手伝う少女・タミル人のジャヤに出会う。周は、ジャヤやいろんな人の話からスリランカにシンハラ人とタミル人がいて対立していたこと、対立は深刻なもので、最近まで内戦状態であったことを知るのだった。

 

 ジャヤは周を連れて、一面のお茶畑や滝などを見て、スリランカの素晴らしい自然に触れ感動する。その感動から現実に引き戻したのはジャヤの言葉だった。日本人の中で友達から意地悪をされている周。くだらない理由だとしても、周個人の問題だ。だが、ジャヤは個人ではなく民族として差別される。ジャヤがどんなにいい人でも、タミル人である限り、スリランカではシンハラ人から差別されるのだ。

 

 周はタミル人の運転手で、ジャヤのお父さんであるセナに、スリランカの内戦の様子と歴史を教えてもらうことになる。セナは「たくさん想像できる人は、人を殺さない。悲しみが想像できるから」と言う。いじめならどうだろう?健一郎に想像する力があったら、周はいじめられなかったのか?周が周囲のことを想像する力があったら、状況は変わったのか?周は混乱する。

 

 偶然の流れで周とおじいちゃん、セナとジャヤの4人はスリランカの古い都ポロンナルワに行くことになる。ポロンナルワの遺跡で、ジャヤの両親であるシンハラ人のお母さん、タミル人のお父さんはそれぞれ信仰する宗教が違うことを教えてもらう。

 

 ジャヤは「神様が違うと困ることもある。でも、どちらもだいじ。ちがうことは悪くない、きらったらだめ」というが、周は賛成しきれない。周は勉強ができる。いい意味でも悪い意味でも教室の中で目立ったからいじめられた。みんなとちがうからだ。学校ではみんな目立つのを嫌う。

 

 ジャヤはシンハラ人から仲間外れにされているが、ひとりでも大丈夫なように自分を強くしているという。でも、いっしょにハッピーになれるのが一番だとも。周は自分の身に置き換えて考えてみる。ひとりになれて誰とも交流しないのもベストではない。でも、健一郎や洋介とも友達になれるだろうか?

 

周は教室では自分の事しか見えていなかった。ジャヤが自分との別れを惜しんで泣いてくれたとき、加奈を自分の世界から追い出していたことにも気づく。日本に帰り教室に戻った時心を閉ざさずにいられるだろうか?洋介の立場や、健一郎の違った一面について想像力をはたらせられるだろうか?

 

自分自身の生き方を見つめ直した周は、「じっとうずくまっていても、自由は訪れない」という強い気持ちを持って日本に帰る飛行機に乗る。

 

 感想

 

 

などなど考えながら読みました。

 

「いじめ」と「内戦や差別」。どうつながるのでしょう?

 自分だったらどうするでしょう?

 

 周はいじめられてしまうわけですが、自分がされた嫌なことそのものよりも、それを周りの友達に見られたはずかしさ、みじめさのほうがつらいもの。周が加奈に冷たくあたっちゃうのもわかります。でも、それがもっと自分を苦しくさせます。

 

 周が言うように「いろんな人の立場で考える」とはどんなことなのでしょうか。

 

 ・洋介は「周と仲良くしたい気持ち」と「健一郎にハブられるこわさ」とで板挟み

 ・加奈は気持ちが優しいので、強い言葉を使うのは苦手だし、もしその言葉をつかったら相手はどんな気持ちになだろう?ということまで考えてしまいます。

 

 それぞれ周のことを考えているけど、どうしていいのかわからず迷っています。二人の気持ちを考えたとして、周はどうするのでしょうか?ふたりと普通におしゃべりする?距離を置く?続きが読みたいように思いました。

 

 

 

 さいごに・・・・・・わたしならメチャメチャ勉強して学力の高い学校にできるだけ早く入ることを目指します。学力の高さを皮肉る学友はいりません(周もいじめっこもお互い不幸)。

 

  周が、学力の高さをからかわれることで好きな勉強をすることにモヤモヤを感じているのは、もったいない。

 たとえば彼が将来スリランカのためになにかするにしても、学ばなければいけないことは山積み。そして、お医者さんになりたいといったジャヤにきちんと向かい合える自分でいたいように思うでしょう。

 

 健一郎もなにか自分が一番になれる、好きなものがみつかればいいですね。