表紙になっている主人公アレックスがパリの路上で誘拐されるところから話は始まります。
ただし、この表紙もすべてが真実ではないのでご用心^_^;
目撃者の通報を受けて警察が捜査に乗り出します。犯人はもちろん、被害者の身元、被害者の行方もわからず捜査は難航。
各章は短くまとめられていて、警察サイドと被害者アレックスサイドの視点が交互になっていてテンポよく話が進みます。誘拐事件は時間との勝負であるのとあいまってドキドキ。
一見すると、よくあるサイコサスペンスのようですがどんな展開なのでしょうか・・・。
帯にはこう書いてあります。
「読み終えた方へ 101ページ以降の展開は誰にも話さないで下さい」
(ちなみに450ページあります)
ちなみに、100ページ前後である男が物語に登場します。彼を本の袖部分にある「登場人物紹介」で見てみると、なんと「誘拐犯」(^_^;)
犯人を冒頭であっさり紹介するとは!この本は誘拐モノじゃないのかも?
120ページ周辺で誘拐犯は死に、アレックスは一命を取り留めます。ですがなぜか彼女は警察に向かいません。
どうやってアレックスは助かったのか?
なぜ誘拐犯は死んだのか?
それは読んでみてのお楽しみ。
この本が誘拐モノじゃないなら、なんなんだろう?
この本は、タイトル通り「アレックス」の話です。彼女の行動に共感はしなかったけれども、残酷な現状と戦い、屈することなく抗っていくアレックスの強さに惹かれます。
そして同書の最大の魅力はやはりラスト。アレックスの選択、刑事たちの結論は賛否両論かもしれません。私はこの重い物語を読み終えて、最後に少し救われた気がすると同時にある絵を思い浮かべました。
エッシャーの「滝」という作品です。
落ちていく滝の水の流れを追っていくといつのまにか塔の最上部へ。
いつのまにか自分の立っている場所が予想しない場所へと変わってしまっています。
『その女アレックス』の肝は、おはなしの構成そのものです。
だからといってながながと説明してしまうのではなく、主人公アレックスの不可解な行動を追ううちにストーリーがまったく違ったかたちになってしまっているのです。
アレックスは胸に昏い炎を掲げて生きる女性でした。